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親の経営していた会社と相続問題

会社を相続する際に知っておきたい重要なポイント

 会社法上、「会社」とは、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいい(会社法(以下法令名略)2条1項)、「会社」は法人として扱われます(3条)。

 法人とは、法律によって認められ、自らが権利や義務を持ち、契約の締結や、訴訟の提起などをすることができる法的な存在です。法人は法律上、人として扱われるものなので、経営者の個人的な財産や所有物ではありません。よって、経営者が死亡しても、法人自体は相続の対象にはなりません。また、会社の財産についても、会社の所有物であるため相続の対象にはなりません。

会社を相続するためには、経営者が所有していた株式を相続することによって、事実上の会社の相続を行うことが可能です。

 なお、個人事業の場合は、事業に関する資産は事業主の所有物となります。よって、事業主が死亡した場合は、事業に関する資産自体が相続の対象となります。このように、法人と個人事業では相続の仕方が異なるため、注意が必要です。

 本稿では、会社が法人形態で、かつ、株式会社である場合の相続について解説します。

会社を相続するための方法とは

 まず、株式会社は、必ず1名以上(取締役会を設置する場合は3名以上)の取締役を置かなければなりません(326条1項)。取締役は、会社の業務執行に伴う意思決定を行います。

 取締役の地位は会社との委任契約(民法643条)に基づいており、委任契約は受任者の死亡により当然に終了します(民法653条1号)。そのため、親が取締役であっても、取締役の地位は相続されません。

 他方、被相続人が保有する会社の株式は相続の対象となります。相続人が引き続き会社経営を続けたい場合、より多くの株式を相続により取得し、株主総会決議において取締役に選任されることが必要です。

取締役の選任決議などは議決権の過半数(309条1項)、会社の事業目的を変えるなどの定款変更や合併など組織改編の場合には、議決権の3分の2以上(309条2項)が必要です。そのため、会社の経営権を支配したい場合は、特定の相続人が発行済み株式の3分の2以上を保有していることが望ましいといえます。

会社を相続するための手順

譲渡等承認請求

まず、会社の定款で「発行する全部または一部の株式の譲渡にについて、株式会社の承認を要する」と規定されている非公開会社(2条5号)の場合、会社から株式の取得の承認を受ける必要があります(137条)。

株主名簿の記載の変更

 株主名簿に記載された人物でなければ、株主としての権利行使ができません(130条1項)。そのため、会社の株式を取得した後に、株主名簿の記載を被相続人から相続人に変更(133条)することが必要です。

役員の地位の確保

株式を相続して株主名簿の名義変更を行った場合、会社の実質的な経営権を持つことが可能ですが、この時点ではまだ株主であるだけで、役職として取締役になったわけではありません。そのため、取締役又は代表取締役の選任を受けるため、株主総会を開く必要があります(329条1項)。

その他手続

 取締役又は代表取締役に選任された場合には、会社の登記を変更する必要があります(911条3項13号、14号)。また、代表取締役に選任された場合には、法人名義の銀行口座の代表者を変更するなど、金融機関での手続きが必要になります。ほかにも、許認可が必要な事業なら、許認可の代表の変更手続きなども必要です。

会社の借金に注意

 相続人は、被相続人の財産(相続財産)に関する、権利義務をすべて引き継ぐことになります(民法896条)。この相続財産に関する権利義務とは、被相続人が所有していた預貯金や有価証券、不動産など、「プラスの財産」だけではなく、負債(借金)などの「マイナスの財産」も含まれることとなります。

 通常、会社が事業用資金として借り入れをした場合、主債務者の名義はその会社です。会社名義での借り入れであれば、返済義務を負うのは会社であり、親が経営者であっても、遺産相続に含まれることはありません。しかし、中小企業や個人経営に近い規模の会社である場合、借り入れの名義人が会社であっても、会社代表者が連帯保証人(民法458条)や保証人(同法446条1項)になっている可能性があります。親が連帯保証人や保証人であった場合、その保証人たる地位は、他の相続財産同様、相続の対象となるため、注意が必要です。

 したがって、経営者であった親の相続をする場合は、親の財産のみならず、会社の経営状況や財産及び負債についても確認しておくべきです。もし、会社の負債の割合が大きく今後会社を経営していっても会社として返済できる可能性が少なければ、相続放棄も検討した方がよいでしょう。相続放棄の手続きを家庭裁判所で行い、受理されれば、初めから相続人でなかったことになるため、(連帯)保証人たる地位も相続しません。

経営者がするべき相続対策

経営者の被相続人に後継者以外の相続人がいる場合、ほかの相続人の納得が得られず遺産分割協議がうまくいかないケースがあります。そのようなケースを避けるためには、相続発生前から対策を行うのが重要です。生前からの相続対策として考えられる方法は、主に3つが挙げられます。

遺言書を作成しておく

会社経営を後継者へ円滑に引き継ぐためにも遺言書を作成することをお勧めします。後継者に対しては会社の株式を相続させることを明確に示し、ほかの相続人に対しては遺留分を侵害しないように株式以外の財産を残す等の対策を行うことが望ましいと言えます。

生前に贈与を行う

会社株式を生前に贈与しておく方法もあります。後継者が確実に株式を取得できるうえ、経営権や相続財産を巡るトラブルを防ぐことが可能です。贈与する際は贈与契約書を作成し、文書に残しておくことが重要です。なお、株式の生前贈与(事業承継)を行う際には、会計士ないし税理士と相談の上行うことをお勧めします。税金のことをしっかり検討した上で、生前贈与(事業承継)を行うことが重要となります。

経営承継円滑化法の活用

経営承継円滑化法[1]を活用する方法もあるでしょう。経営承継円滑化法は、安定的な経営の継続を支援することを目的とした法律で、遺留分に関する民法の特例、事業承継資金等を確保するための金融支援や事業承継に伴う税負担の軽減(事業承継税制)の前提となる認定が盛り込まれています

親の会社相続で悩んでいる方は弁護士にご相談ください

 親の会社を相続するためには、まずは親の遺産や会社の事業用資金の調査などをすることが必要です。その後、会社の経営権を得るためには、遺産分割による株式の取得や、株主名簿の書き換え、取締役選任の株主総会決議など、様々な法律知識が必要です。

会社の相続に関する紛争を未然に防ぎ、また仮に紛争が生じてしまった場合にすみやかに解決するために、お早めに弁護士にご相談ください。

[1] 中小企業庁 経営承継円滑化法による支援https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu.html