遺言に自分への遺産が書かれていない
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目次
遺言に自分の名前がないとどうなる?
相続が起きると被相続人が残した財産は相続人に承継されることになりますが、誰にどの財産をどれだけ承継させるかは基本的に被相続人が自由に決めることができます。
遺言書が用意されていない場合は民法で定めた法定相続分が原則適用となりますが、遺言書がある場合は法定相続分(民法(以下法令名省略)900条)に優先されます。法律よりも遺言書が優先されるのは亡くなる方の遺志を尊重するためです。しかし、もし遺言書にあなたの名前がなかった場合、原則として何の財産ももらえないということになってしまいます。
この場合でも諦める必要はなく、弁護士に相談すれば法律的な観点から相続人としての権利を主張していくことが可能です。
本稿では「遺留分」という権利に着目して、相続財産を受け取る権利を主張していく方法をお伝えします。
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遺留分とは? 自分の権利を守るために知っておくべきこと
「遺留分」とは、相続に際して、被相続人の財産のうち、法律上一定の相続人に承継されるべき最低限の割合のことです。
被相続人は、原則として、遺言や贈与によって、自由にその財産を承継させることができますが、遺留分はこれに対して一定の制限効果を持ちます。遺留分を有する者は、原則として、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・孫などの直系尊属)(1042条1項柱書)です。
遺留分を有する相続人(これを遺留分権利者と呼びます)が相続によって得た額が、その遺留分に達しない場合、遺言により財産を譲り受けたもの(受遺者)や、被相続人から財産の贈与を受けたもの(受贈者)に対して、遺留分侵害請求権(1046条)が成立し、本来もらえるはずだった財産に相当する金銭の支払いを請求することができます。
遺留分侵害請求権は、侵害があれば何もしなくても当然にもらえる、というわけではなく、相手方に請求して初めて発生する権利です。遺留分侵害額請求をしたい時や遺留分侵害額請求をされた時は、まずは正しい遺留分の額を把握しましょう。そのうえで遺留分侵害額請求をするか・遺留分侵害額請求に対してどのように対処するのか決めていきましょう。
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遺留分ではどのくらいの割合を受け取ることができる?
遺留分は最低限の取り分ですので、法定相続分を保証されるわけではありません。
遺留分は「総体的遺留分」と「個別的遺留分」という二つの概念があります。総体的遺留分というのは、遺留分権利者が複数人いる場合における、遺留分権利者全体が保有する遺留分割合をいいます。総体的遺留分は相続財産全体に対し、直系尊属のみが相続人となる場合は三分の一まで、それ以外の場合は二分の一まで認められます。
そしてその総体的遺留分を各相続人の法定相続分で配分したものが「個別的遺留分」です。
ケースごとに各人が実際に受け取れる個別的遺留分は変わるため、具体的な個別遺留分については、弁護士にご相談ください。
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遺留分侵害額請求の方法
遺留分侵害額請求をするには、実は裁判所に行かずとも、相手方(遺言により財産を受け取る人や、贈与により財産を受け取る人)に内容証明郵便などで意思表示をすれば足ります。
しかし、相手方と協議することで遺留分を取り返せる場合は少なく、応じてもらえない場合が多いです。応じてもらえない場合は、家庭裁判所で調停を申立して、調停員を介しての話合いとなります。その調停にも応じない場合は、訴訟を起こすことになります。
遺留分侵害額請求をするときには、自分一人では調べて進めるのは難しいですので、弁護士に法的主張の組み立て方や協議・調停・裁判における立ち回り方についてサポートを受けることで、より最適に進めることができます。
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遺言に書かれていない財産がある場合の対処法
遺言書の作成時点では存在していなかったけれど、遺言書作成後に追加で取得した財産がある場合、遺言書に書いていない財産となってしまいます。
例えば、遺言書作成後に株式・投資信託・不動産を購入した場合や、新しい銀行口座を開設した場合の預金口座、親・祖父母・兄弟姉妹から相続した財産などがこれに当たります。
遺言書を作成した後に取得したり、遺言書作成時点で書き忘れてしまったために遺言書に書かれていない財産があるとき、原則は遺言書がない状態として相続人がその財産について遺産分割協議をすることになります。
ただし、遺言書の中で「一切の財産」「すべての財産」といった包括的な記載や、「〇〇銀行に預託する預金、債権等のすべて」「〇〇証券会社に預託する金融資産すべて」といった特定をしていれば、万が一遺言書作成後に財産を取得しても網羅できているため、遺言書に従って相続手続きが可能です。
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お困りの場合は弁護士にご相談ください
遺言書に名前が無い場合でも、遺留分侵害請求によって、遺産を取得することが可能です。
遺留分侵害額請求は、ご自分で進めることも可能ですが、相続財産の調査や遺留分の算定、協議や調停の進め方などを熟知した弁護士にご依頼いただくことが、最終的には最適な解決に至る近道となります。
お困りの場合は、一度弁護士にご相談ください。