不動産の相続問題
目次
不動産相続トラブルのよくある相談
不動産相続のトラブルは、ご家族間で意見が対立したり、複雑な状況が重なることで発生しやすく、非常に悩ましい問題です。
よくある相談内容をいくつかご紹介します。
遺産分割協議が進まない
- 相続人それぞれが不動産の価値を異なって評価するため、不動産の評価額で意見が合わない
- 特定の相続人が、不動産を独占しようとし、他の相続人の同意が得られない
不動産の処分方法で意見が合わない
- 不動産を売却して現金化人と、不動産を保有したい人で意見が分かれる
- 未成年者や認知症の相続人がおり、その人の法定代理人が決まるまで、処分ができない
不動産の名義変更手続きが滞る
- 不動産の名義変更には、原則として全ての相続人の同意が必要であるが、相続人全員の同意が得られない
- 相続人が不明で手続きができない
不動産が老朽化している、または借地権である
- 不動産が老朽化しているおり、リフォーム費用を誰が負担するかについて意見が割れている
- 借地権の不動産であり、借地契約の更新手続きや、更新料の負担について意見がまとまらない
不動産相続でトラブルが起こりやすい理由とは?
不動産の分割が困難
不動産相続でトラブルが起こりやすい理由の一つとして、不動産が分割しにくい財産であることが挙げられます。不動産は、現金や預金と比べて高額な財産であることが多く、その購入には、一般的に、注文住宅で3,500万円程度、土地付き注文住宅で4,500万円程度はかかるといわれています。このように高額であるがゆえ、複数の相続人が取得を希望して意見が対立してしまうことが多くみられます。
また、不動産は物理的な分割が難しいため、誰がどの部分を相続するか、あるいはどのように公平に分割するかで対立が生じやすくなります。さらに、分割すると不動産の価値が大幅に下がる場合もあります。
評価額が確定しにくい
不動産評価額を算定する評価方法は複数あり、どれを採用すべきという決まりはありません。
不動産評価額の算定の際には、相続税課税額を算出する際に適用される「路線価」を用いることもあれば、不動産業者に査定してもらって、実際に売買する際の「時価」を用いることもあり、それぞれの方法によって評価額が大きく変わることがあります。
さらに、不動産の価格は、市場の動向によって常に変動するため、評価額が確定しにくいという事情もあります。このように、不動産の評価方法は統一されていないため、相続人間で意見が割れてしまう原因となります。
不動産相続トラブルを解決する方法と弁護士に相談すべきタイミング
不動産相続トラブルを解決する方法として考えられるのは、当事者間での話し合いや、遺産分割調停の申し立て、不動産の共有解消、不動産の代償分割などが考えられます。
相続税の申告は10か月以内という期限があるため遺産分割は早めに行う必要がありますが、相続人同士の話し合いがまとまらない場合や、相続財産の評価額について意見が食い違う場合、当事者だけでは遺産分割協議が迅速に行えない場合があります。そのため、相続人間で意見が割れているときや、意見が割れることが予想される場合には、弁護士に相談すべきといえます。
また、相続放棄や限定承認を検討している場合、こちらも期限があるため、被相続人が無くなってからなるべく早めに弁護士にご相談することをお勧めします。
不動産相続トラブルを予防する方法
遺言書の作成
遺産分割トラブルを予防するための手段の一つとして、生前に遺言を作成しておくことが挙げられます。遺言はご自身で作成することもできますが、種類によって法律で厳格に書き方が定められています。そのため、せっかく書いた遺言書も、書式に不備があることで、遺言書自体が無効になってしまう場合があります。また、遺産分割の際のトラブルを防止するような遺言を作成するためには、遺言者の財産や債務、受遺者の寄与分や遺留分を考慮して遺言内容を決定していく必要があります。
弁護士にご相談いただければ、ご相談者様の事情や要望に応じて、将来トラブルを防止できるような作成する遺言の種類や遺言の内容をアドバイスさせていただきます。ぜひ一度ご相談ください。
相続人間での事前の話し合い
生前に家族全員で話し合い、相続に関する考えや希望を共有しておくことが有効です。特に不動産の相続については、誰がどのように受け取るか、または売却するかなどの意向を確認しておくことで、相続後の争いを防ぐことができます。
不動産の評価と資産分割の準備不動産の評価額を事前に把握し、相続人間でどのように分割するかのプランを立てておくと、トラブルが減少します。例えば、不動産を売却して現金化し、平等に分配する方法や、特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人にはその価値に応じた代償金を支払う方法などを検討できます。
もっとも、所有している不動産が多数であったり、不動産が農地や山林などの管理が難しい不動産であると、事前に相続人同士の話し合いで遺産分割のプランをたてる事が困難な場合があります。このような不動産の相続でお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。
不動産相続トラブルを弁護士に相談するメリット
適切な不動産の分割方法のアドバイスを受けられる。
不動産を相続した場合、不動産を含む遺産を分割する方法として、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の方法があります。
- 現物分割とは、遺産をそのままの形で分割する方法です。例えば、この建物は妻に、この宅地は長男に、この株式は次男に、それぞれ取得させるというように、遺産を構成する個々の財産をそのまま各共同相続人に分配する、または、一筆の土地を相続人の数に応じて分筆して各相続人に取得させます。
- 代償分割とは、ある相続人が遺産を取得する代わりに、他の相続人に対してその分の価値を現金などで補填する方法です。
- 換価分割とは、遺産を売却して、その売却代金を相続人間で分割する方法です。不動産や株式などを現金に換え、その現金を相続人間で分けます。
- 共有分割とは、遺産を共有状態で相続する方法です。不動産などを売却せずに複数の相続人が共同で所有する形になりますが、後に共有状態を解消するために売却や分割が行われることもあります。
相続人の置かれた状況によって、どの分割方法が適切かは異なります。弁護士ご相談いただければ、適切な方法で不動産の評価額の算定を行い、相続人らにとって最も適切な分割方法のアドバイスを受けることができます。
相続人間の交渉の仲介をしてくれる
不動産は高額な財産であることが多いです。そのため、誰がどの不動産を相続するかによって、相続人間で激しく意見が対立してしまうケースがよく見られます。
そのような場合には、弁護士に依頼することで、相続人間の連絡や調整を弁護士が行い、これまで感情的なやりとりから解放されます。万一激しい対立が生じて紛争になってしまった場合でも、弁護士を間に挟むことで相手方と調整を行うことができ、円満な遺産分割を目指すことができます。
遺産分割調停や審判の対応が可能となる
不動産の分割方法について、相続人間でまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を求めることが必要となります。
調停は、調停委員が関与しますが、あくまでも相続人間の話し合いになります。そのため、相続人間で不動産をどう分割するか合意ができれば、その通りに解決できますが、相続人間で合意ができなければ、遺産分割審判に移行することとなります。審判は、裁判と同じようなもので、当事者の主張や証拠に基づいて、裁判官が遺産の分け方を強制的に判断します。
調停や審判になれば、寄与分や特別受益、さらには不動産や株価の評価などといった複雑な法律問題が発生します。このような対応を弁護士に依頼することで、適切な主張立証を行うことが可能となります。
まずは弁護士にご相談ください
不動産は、現金預金と異なり単純に分割することができず、当事者間の利害の対立も深刻なケースも多くあります。また、不動産を巡る相続トラブルは、複数のトラブルが潜在的に存在していることから、解決が難しい場合も多いです。このような場合、弁護士に依頼することで、トラブルを回避することができるだけなく、円滑に手続きを進めることができます。
不動産の相続でお困り場合には、弁護士に依頼することで、紛争を予防するために遺言を作成してもらえる、状況に合った分割方法のアドバイスを受けられる、不動産の価値を適切に評価してもらえるなど、多数のメリットがあります。
不動産相続は、専門家の力を借りることで、より円滑に解決できる可能性が高まります。迅速かつ円満な解決のために、弁護士への相談をご検討ください。