遺言無効
遺言の有効性が争われるケース
遺言の有効性が争われる場合として、ご家族が亡くなられた後、想定していなかったような遺言が出てくる場合があります。
例えば、多くの土地を所有するAには、妻Wと子X・Yがいたとします。Aは認知症が進行し重篤となっていましたが、「自分の財産は、すべて妹S夫婦にあげる。」との遺言を残した場合、W・X・Y遺言の有効性を争うことが考えられます。
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遺言の無効事由
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自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言とは、全文を遺言者が手書きで作成する遺言書です。遺言の内容となる全文・日付・氏名をすべて自書して、これに押印することが要件となります。
自筆証書遺言は、方式が簡単で、費用もかからないというメリットがあるため、最もよく使われる方式です。他方、デメリットとしては、遺言書が適切に保管されていない場合、遺言書の滅失、偽造、変造のおそれがあります。
自筆証書遺言の無効事由として、以下のようなものが考えられます。
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遺言の方式を具備していない
自筆証書遺言は、上記の通り、遺言者が全文・日付・氏名を手書きし、押印する必要があります。このような決まりを守っていないと、それが理由で遺言が無効とされることがあります。
たとえば、パソコンで遺言を作成・印刷し、そこに署名押印したとしても、全文を自筆していないため、無効となります。
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遺言能力・意思能力がない
遺言能力とは、遺言をすることができる能力をいいます。原則として、15歳に達した者であれば遺言能力が認められます。
そして、遺言における意思能力とは、自分のする法律行為(契約・遺言など)に基づく権利の変動の意味を理解する能力をいいます。
たとえば、被相続人が遺言を作成した時期に認知症であった等、遺言の意味を理解していたかどうか疑わしいような事情がある場合、遺言作成時に意思能力がなかったとして遺言が無効になる可能性があります。
実際に遺言能力や意思能力が否定されるか否かは、様々な事情を考慮した上での判断になるため、生前に認知症だと診断されていても、遺言能力が認められる場合もありますし、逆に認知症と診断されていなくても遺言能力が認められない場合もあります。
弁護士に依頼した場合、弁護士が、医師による診断だけなく、生前の被相続人の様子、遺言の内容等の様々な事情を収集・分析し、遺言能力や意思能力の有無を争うことができるかを判断いたします。
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公正証書遺言の場合
公正証書遺言とは、公正証書遺言は、公証人の関与のもとで作成する遺言です。公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。
このように、公正証書遺言は公証人が介在することから、法的な内容や、方式の不備で遺言が無効になることはありません。
しかし、次のような場合は、公正証書遺言が無効とされる可能性もあります。
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遺言能力が否定される場合
自筆証書遺言と同じで、遺言者に遺言能力・意思能力がなかった場合、公正証書遺言は無効となります。
公証人は、遺言者が、遺言の意味を理解できているか確かめながら遺言を作成するため、自筆証書遺言に比べ、遺言する時に遺言能力や意思能力がなかったと判断されることは少ないです。
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口授が行われなかった場合
口授とは、遺言の内容を遺言者が公証人に直接口頭で伝えることをいいます。口授が要求されている趣旨は、遺言意思の真正さを担保するためです。
このような口授が、実際には公証人の質問に対して遺言者が頷いていただけなど、単に肯定又は否定の挙動を示したに過ぎないと認められる場合には、適法な口授がなかったものとして公正証書遺言が無効とされる可能性があります。
弁護士に依頼した場合は、適法な口授がなされたかを調査し、公正証書遺言が無効とされる見込みがあるかを判断いたします。
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遺言の有効性が認められてしまったら
仮に、相続人の一人に遺産のすべてを相続させる旨の遺言があったとしても、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子供、直系尊属)であれば、自己の遺留分を請求することができます。
遺留分制度とは、相続人を保護するため、必ず相続財産の一定額を何らかの方法で保障する制度です。
弁護士にご相談いただければ、侵害された遺留分の計算や、相手方に対する請求をおこなうことができます。
Ⅳ遺言無効の主張方法
遺言が無効である旨の主張は、共同相続人を被告として、遺言無効確認の訴えという訴訟を提起することとなります。
遺言が無効であるとの判決が下されると、その遺言が訴訟当事者間では無効であることが確認されます。
遺言無効確認の訴えを提起する際に、遺言が無効でない場合に備えて、予備的に遺留分侵害請求を提起することもできます。
弁護士にご依頼いただければ、訴えを提起すべきかどうか、訴訟の方針をどのようにするかなどを判断し、訴訟を提起する場合には依頼者に代わって訴訟追行をすることもできます。まずは一度、ご相談下さい。